「憂鬱と官能を教えた学校」

 ケーブルテレビで「憂鬱と官能を教えた学校」という番組を見た。菊地成孔大谷能生による音楽理論の講義なのだが、トークショー的な色合いもあって、というか、本質トークショーなのかもしれんが、すごく面白い。見たのは第3回目で、調性についての講義だったが、ニコニコ動画で1回目も一気に見てしまった。
 菊地成孔の説明の分かりやすさに驚いたが頭の回転の早さにも舌を巻いた。演って良し書いて良し喋って良し。書くってのはもちろん曲と文筆両方で。
 この番組は二人による同名の書籍に基づいていて、「憂鬱と官能を教えた学校」とはアメリカの「バークリー音楽院」のことである。初めてポピュラー・ミュージックの音楽理論を教えるために設立され、つまり米ポピュラー・ミュージックというのはブルースをその最も大きな源とする訳で、「憂鬱と官能」とはそういう意味である。こういう書名のセンスも素晴らしい。
 内容は、実際の楽理的なことから、楽理史的なことにまで及ぶのだが、平均律の登場が、近代的自然科学観とシンクロしていたっていうのは、目から鱗だった。
 恐れながら、ちょっとだけギターを弾いてきた今までの人生だけど、「-5」っていうコードが、減5度というのを知った。5度の音を省略したコードかと思っていた。だって、そんな難しいコード、押さえたことないもん。
 菊地成孔ニューエスト・モデルメスカリン・ドライヴにホーンで参加した曲も多く、「雑種天国」のあのホーンは彼だったのか!と今更、ウィキペディアを読んで、CDのブックレットを確認して、知った。ホーン・アレンジではどれくらい関わったのだろう。「ビートルズ・アンソロジー」や「クラシック・アルバムス」みたいなソウル・フラワーの映像のドキュメンタリー、出ないかな。難しいか。
 しかし菊地成孔リーダー作はちゃんと聴いたことはなく、タワレコなどの試聴機でちょっと聴いて格好いいなとは思いながらも、買うまでには至らなかった。買う寸前まではいつも行くのだが。
 講義では鍵盤を使って解説していて、我が手元にはギターしかないので、とても不便だ。というか、弾いてもない。いちいちチューニング面倒だし。その時点でダメじゃんだけど。 鍵盤が欲しい。この番組を見ながらなら、今度こそ、コードとかスケールとかいうものが理解できて、自在に使えるようになって、フジロックとかに出られる日も来るかもしれない。