裏切り者のウルトラマン

 友人と映画に行く予定だ。
 実は以前に「ガンダムOO」に行く約束をしていたのだが、私が抜け駆けをして一人で行ってしまった。それを知った彼からは「獣人ヘリトンボ」「バンリキ魔王」そして「ウルトラマンベリアル」と罵る怒りののメールが来た。「裏切り者」だということだ。(それは嘘だけど。)
 気を取り直して、改めて実写版「宇宙戦艦ヤマト」に行く約束をした。
 ところが、「ヤマト」と同じ十二月、他にも見たい映画が目白押しである。「ライダー」と「ウルトラ」だ。
 「ウルトラマンゼロ 超決戦ベリアル銀河帝国」にはかなり惹かれる。なんせ、ゼロはウルトラセブンの息子にしてウルトラマンレオの弟子なのだ。これは、第二期ウルトラシリーズにかすった世代にとっては、極めてツボを突いた設定だ。
 周知のように、ウルトラマンレオウルトラセブンの弟子である。マグマ星人に変身不能に追い込まれたウルトラセブンモロボシ・ダンはたまたま地球に滞在していた宇宙警備隊員ではない民間人の、寧ろ難民とも言えるウルトラマンレオ−おおとりゲンを、自分の代役として、鍛えに鍛えた。レオ自身も地球防衛の任に就くことは望んでのことだが、その鍛え方たるや、杖でぶん殴る、崖から突き落とす、ジープでひき殺そうとする、など、常軌を逸していた。その熱い期待に応え、レオは立派なウルトラマンとして地球を守り抜き、ウルトラ兄弟の一員として認められた。その前には、有らぬ疑いをかけられてウルトラマン帰ってきたウルトラマンウルトラマンA、ゾフィの4兄弟による合体光線を浴びせられたりもしたが…。ウルトラの星出身ではないレオ兄弟への偏見があったのかもしれない。
 ウルトラ戦士としては多少自覚と自制に欠ける跳ねっ返りのウルトラマンゼロを鍛える時、ウルトラマンレオの胸中にはどんな思いが去来したであろう。ウルトラセブンの恩に報いるため、そしてちょっとくらいの仕返しもしてやろうかと、思ったに違いない。
 そんな訳で、突発的に私の中でウルトラブームが巻き起こったのである。早速TSUTAYAに行って、ウルトラマンゼロ初登場の「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説」を借りた。去年公開されたばかりの映画で、まだ準新作であって多少高かったのだが、そんなことは言ってはいられない。
 ウルトラファン、とりわけ小学館の図鑑や漫画「ウルトラ兄弟物語」や「ザ・ウルトラマン」(アニメ作品の方ではない)などを読んで「M78星雲 光の国」に思いを馳せた幼少の記憶を持つ者にとっては、それはまさに「夢の実写化」であった。
 光の国を襲う悪のウルトラマンベリアルになぎ倒されてゆく名もなきウルトラ戦士たち。そして宇宙の果ての怪獣墓場での大怪獣軍団。まさしく小学館のウルトラ漫画の世界だ。
 ちなみに十把一絡のウルトラ戦士の中には、アメリカやオーストラリアで活躍した人たちもいた。残念ながらジョーニアスはいなかった。いてもよかったと思う。ウルトラウーマンたちアニメ出身のウルトラ戦士もいたのだから。(私が見つけられなかっただけかもしれない。要スロー再生。)
 その世界観はCGの時代だからこそ描きえたのであるが、その後に続けて「ウルトラマンレオ」を見てみると、アナログ故の重厚さがある昭和日本特撮の素晴らしさに目を見張った。どっちがいいとかではなく、どちらも素晴らしい。
 ところで、新作映画の「ウルトラマンゼロ 超決戦ベリアル銀河帝国」のwebページを見る限り、ウルトラマン80の出番が多そうだ。原典で変身前を演じた長谷川初範本人が声をあてている。
 「ウルトラマン80」は初めてリアルタイムで見たシリーズだけにこれは嬉しい。80はまだレンタルDVDもリリースされていないし、第2期のシリーズに比べても認知度が低く不遇かもしれない。製作中何度も路線変更が行われ、取り留めのない作品になった。一番地味なウルトラマンといってもいい。それでもやはり思い出深く特別な感情がある。ちなみに「ウルトラマンメビウス」での客演の時には、「教師編」にしっかりと決着がついたことに80ファンは沸いた。
 そんなウルトラ旋風が吹き荒れているここ数日の私だが、今日は一日中ウルトラシリーズのDVDを見ていささか疲れている。そしてこのウルトラブームはまだまだ続くだろう。