友達の唄

 友達が死んだ。
 彼は神戸での私ら夫婦の結婚パーティで唄ってくれた。富山から遠いところを来てくれたのだった。
 彼が病で苦しんでいたとは知らなかった。
 もし知っていたからといって、私に何ができた訳でもない。それでも、もっとまめに連絡をとっていれば良かったと悔やまれる。
 結婚パーティ以来会ってはいなくとも、彼を思い出すことは多かった。訃報に接する前の日もTボーン・バーネットを聴きながら、そのCDを彼に貸したことがあったことを思い出していた。
 春の岡山での山口洋のライヴにも来ていたそうだ。行っていたら会えただろうに。
 彼はロックンロールと鉄道と郷土を愛した人だった。あの日の神戸で聴いた彼の「満月の夕」は一生忘れる事はない。彼の早過ぎる死によって、その想いもさらに特別なものになってしまった。
 昨日、何年かぶりに彼の音源のMDを聴いた。もし友人として彼に会っていなくても、彼の唄を聴いたなら好きになっていただろう。
 今はただ、冥福を祈るのみ。