今の我が身は必殺地獄

 好きでもなんでもない曲なのではあるが、三田村邦彦の「いま走れ! いま生きる!」がずっと耳の中で鳴って止まないのは、瀬戸内海放送で月〜金の「必殺仕事人」の再放送を見ているから。週当たり五時間弱も消化するのは結構きつい。さらに、金曜日には最新作「必殺仕事人2009」の放送もある。 
 仕事人シリーズの第一作である「必殺仕事人」は、長い必殺シリーズの中の前期と後期の(ただし、マニアの間では前期・後期の分け方でも諸説あるのだが。)端境期であり、ハードな前期の雰囲気も維持しつつ、後期のコメディ路線の萌芽も見られる。一般的知名度、人気は高い作品であるが、マニア間ではそれ故、意見は分かれているらしい。(情報源ウィキペディア。)本当は私も「必殺仕業人」や「新必殺仕置人」の方が見たい。でも「必殺仕事人」も充分に面白い。
 必殺シリーズは「新必殺仕事人」あたりからはすべてリアルタイムで見たし、再放送でほとんどの作品も見たと思う。(さすがに「翔べ! 必殺うらごろし」の再放送はなかったが…。)
 リアルタイムで見たころは「必殺仕事人3」〜「5」あたりのおちゃらけぶりが最も魅力的なところであったのだが、今では「新」以降には興味はない。それでも実は「必殺剣劇人」はまた見てみたかったりする。
 ちなみに非主水シリーズで好きなのは「助け人走る」と「必殺からくり人」だ。「助け人」にはズバットの人が出ている。それが理由ではないが。
 「助け人」に主水がゲスト出演していたのには驚いた。ラストの解散劇も印象に残っている。(「必殺仕事人5風雲竜虎編」のラストはこの焼き直しであった。)
 「からくり人」のラストも衝撃的だった。鳩が…。
 「必殺必中仕事屋稼業」はマニアの間で評価が高いようだが、記憶にない。見てないはずはないのだが…。オープニングナレーションにも聞き覚えはある。
 そんな訳で今、必殺に嵌まっている。だけど、レンタルDVDは仕事人シリーズや「必殺仕掛人」しか出てなくて、セルを買う財力も胆力もなく、再放送かレンタルが出るのを待つしかない。瀬戸内海放送の次の必殺シリーズの再放送枠は何だろう。その前は「暗闇仕留人」だったから制作順ではないようだが、知名度が高く安定して視聴率が稼げそうな仕事人シリーズで来そうな気がする。
 で、「2009」には最初から期待していなかったし、正直見るのも苦痛であった。どうしても再放送の「仕事人」と比べてしまうし、東山紀之の渡辺小五郎は嫌いではなかったが、松岡昌宏の涼次のオーバーアクションな芝居や、キャラクター描き込みも皆浅くて薄くて、時事ネタを無理に持ってくるあたりも取ってつけたような印象があり、肝心の中村主水藤田まことも、老いのせいだけではなかろうが、ただの好々爺にしか見えず、かつての袖の下を貰いまくっていたような中村主水の「表の顔」の厭らしい感じが全くなく、同一人物には思えなかった。
 それが、十話で化けたとしか言いようがない。渡辺小五郎は多分、若き日の主水よりもずっと非情に徹することのできる男なのだろう。主水は、秀をぶん殴りながらも結局いつも赦して歩み寄っていたのだが、十話最後の場面での小五郎は、本気で同僚の大河原伝七もろとも仕事人仲間の源太を殺すつもりなのだろう。迷いがあって仕事をしくじった源太の、パニックになって閂や終いには石で相手を殴打する描写は、殺しのプロからは最も遠い無様さで、素晴らしかった。(過去にシリーズの中でこんな前例があったのかは知らない。)
 間違いなく十一話の冒頭で涼次あたりが止めに入り、小五郎は手を下すことはないだろうが、事をどう収めるかも気になるし、来週再来週と放送が休みなのが苦しい。こんな状態で三週間も待たされるのは。
 今まで必殺シリーズを見続けて来てよかったと、2009年になっても思えるとは予想もしていなかった。
 これから何故小五郎が仕事人の道に足を踏み入れたかや、涼次や源太たちをチームを組むことになった経緯が描かれるのだろうか。ハードな雰囲気で、チームの間で緊張感を持ったままでもう1クールを突き進んでほしい。
 そんな訳で、この前の金曜から、幸せな気持ちなのである。
 
 ところで、四月にディラン新譜が出るらしい。前作からは三年弱とベテランにしては短いインターバルだ。チェス・レコードの作品のような雰囲気らしい。国内盤がいつになるのかは分からないが、これも楽しみだ。