拝謁できず

 その後、この旅行の最初の失敗なのであるが、素直にモノレールに乗ればよかったものを今度は違う乗物を体験しようと、京浜急行に乗った。多分、大きなロスであった。何度か乗り換えて大手町駅に着いた時には10時ギリギリであった。荷物を持って走ったので無駄に体力を消費する破目になった。
 参観は予め申し込んでおいた。申し込んでおくと、一般人は入ることのできないところも宮内庁の職員が案内してくれる。
 イメージとしては、倉敷美観地区の観光ガイドボランティアのように少人数で質問しつつ和気あいあいと連れて回ってくれるのかと思っていたが、花の大帝都でそんな訳はなく、修学旅行生も含めて百人以上の団体行動であった。
 皇居内はやはり広く、中を省庁の車が行き交っていた。数十メートル置きに皇宮警察官が見学者の列を覆うように立っていたのだが、それはテロに対する警戒もあるだろうが、交通安全上の配慮が大きかったのかもしれない。
 立入禁止区域を見学とは言っても、御所などの建物内に入ることは当然なく、江戸城の遺構の櫓などは外からでも見えるので、予約して参観することのアドバンテージはそんなになかったように思う。Tシャツにジーパンという格好だったので、もし陛下に拝謁するような機会に恵まれたらどうしようという危惧があったが、杞憂であった。
 1時間少しほどで内部の参観は終了し、昼御飯を食べようと思ったが、丸の内というところは、意外と食べるところがない。公官庁というものには概ね豪奢な食堂が完備されているのであろうか、マクドや吉牛といった感じの店が全然ないのである。東京駅まで行くのもしんどい。仕方がないから、やっと見つけたコンビニでおにぎりとサンドウィッチを買い、和田倉門跡噴水公園で食した。予定では皇居参観の前に何か食べておくはずであったから、かなりの空腹であった。
 やっと生き返り、皇居観光のメイン、「皇居東御苑」へ行こうとした。これは、一般にも開放され、予め申請していなくても見学でき、また江戸城天守台跡、松の廊下跡、三の丸尚蔵館など、見るべきものが多いのである。
 が、金曜日は東御苑は解放されていなかった。立入禁止区域内への参観はやっているのに東御苑が「休み」とは、まったくのノー・マークであった。しょんぼりした。
 気を取り直し、皇居外苑の楠正成銅像へと向う。皇居外苑は公園のようになっていて、いつでも入ることができる。上野の西郷どんは前に見たので、東京三大銅像はこれで二つめ。さっき参観の時渡った「二重橋(鉄橋の方)」も見えた。
この日も沢山の皇居外周をジョギングしている人を見た。そして、皆、異様に早い。マラソン大会で本気で入賞を目指すくらいに早い。なぜみんなそんなにハイ・レヴェルなのだろう。岡山のジョギンガーなどとは全然違う。