やっぱりくるり

グル・ヘッド

 くるりの新譜は日本のロックバンド初のウィーン録音。岸田が近頃クラシックに接近していることは昨年末のミュージックマガジンの私選年間ベストアルバムで、タワレコモーツァルト10枚組や「のだめカンタービレ」のサントラなどを選んでいるのを見て、「正気か?」という感じだった。だから、そのウィーン録音の新譜にも期待はしていなかったし、今回のツアーの会場が「市民会館系」の椅子のあるホールだったので、しばらくはくるりとは距離を置くことになりそうな予感がした。かといって、やはり新譜「Tanz Walzer」は買ったし、ライヴのチケも取った。
 で、その「ワルツを踊れ」は結論から言えば、くるり最高傑作だと思う。思ったほどクラシック色は強くないというか、ロックから離れてはいないし、何よりメロディが素晴らしく、岸田のひねくれたポップさがさらに深化した。オーケストラの使用も嫌味ではなかった。先入観を持ってはいけない、ということで…。
 ところが、先日観たライヴの方は何故か全然来なかった。「NIKKI」の時も「アンテナ」の時もライヴはすごく感動したのだが。
 ドラマーは本アルバムから参加の人だが、好きになれなかった。音源では違和感は感じなかったけど。
 クラシック寄りな作品を受けて会場が椅子付きだから、ライヴでも生ストリングスが入るのかと思えば、ストリングスはサンプリングで、替わり?に蝶ネクの合唱隊が3人いた。この合唱隊にどうもルックス面で退いてしまったのもあるかも。でもコーラスのハーモニーは素晴らしく、普通ロックバンドの楽器しながらの片手間的なコーラスではあんなにきれいにはできないだろう。
 でも岸田の声は好きだし、いい瞬間もあった。やはり奇想天外で素晴らしいアルバムを出し続けるくるりであるから、これからもずっと聴き続けるとは思う。
 しかし、会場の「倉敷芸文館」は大きかった。トイレだけでも岡山モグラくらいはあるかも。少なくとも、倉敷クッキージャーよりは大きい。当たり前か。ディランを観た大坂厚生年金よりは小さいが、ホールなんかでライヴを観るのは珍しい体験であった。