今のディラン

 ヒートウェイヴの「トーキョー・シティ・ヒエラルキー」の5番を口ずさみながら家に帰ると、アマゾンからディランの新譜が届いていた。店で買わずネット通販ですみませんって感じだが、期待は裏切られなかった。今2順目だが、「ラヴ・アンド・セフト」を初めて聴いた時のような「うわぁー」って感じはないけれど、地味でありながらじわじわ効いて来そうな予感がする。1曲目最初の感じで「アンダー・ザ・レッド・スカイ」っぽいなとか思ったけど、一瞬でそういうレヴェルじゃないって分かった。デジャヴューな曲もあるが、名曲の名を与えられるべき曲もある。「ラヴ・アンド・セフト」の継続型っていう香りは強い。「オー・マーシー」や「タイムアウト・オブ・マインド」のような特殊な世界観はない。「ブラッド・オン・ザ・トラックス」のようなヒリヒリする痛みはないし、フォークロック3部作(あれらを3部作として一括りにするのも違うとは思うが。)のような地獄のテンションはもちろんない。等身大65歳のディランであるし、引き出しのごくごく良く使う使い慣れたところを無理なく引き出してみたって感じだろうか。
 これを書きながら聴いているので、詞は判らない。後で対訳を見つつじっくり味わって聴こう。「ラヴ・アンド・セフト」は9.11に出た図らずも運命的な作品だったが、あれから5年。ディランの言葉の中で描かれるアメリカは、今どんなんなんだろう。