雑種犬の思い出

 山口洋さんの愛犬ハナちゃんが逝った。私も2年前に犬を亡くしたから、気持ちは分かると思う。
 今でもよく思い出す。でも、それは喪失感とか悲しみとかではなく、いい思い出としてだ。あの犬と過ごした13年は楽しかった。県外にいて離れていた期間もあったが、帰りを待っている犬がいることは帰高する時の大きな楽しみだった。高知城鏡川に散歩に行った。室戸岬まで車に乗せていったこともあった。車酔いがひどかったが、太平洋の砂浜に遊ぶ姿は嬉しそうだった。
 拾った時には仔犬だった奴もいつの間にか老犬になり、天寿を全うした大往生であった。だから死んだ直後も、喪失感はあったが、悲しみは意外なほど少なかった。老いてやって来る死は避けられないが、苦しまずに逝ったことは最後の優しさのように思えた。
 天国というものがあるのなら、また犬と飼い主として出会いたい。