苔生した転石

 で、ストーンズの新譜である。これがまた、今だCCCDで出すという暴挙なのだ、EMIは。欧盤もCCCDである。CCCDは買わないことにしているが、試聴するとなかなか良かったので、買ってしまった。後で調べたら、US盤はCCCDではなかった。もう遅い。しかしアマゾンの値段設定ではUS盤は国内盤よりも高い。足元見たのだ。去年出たジョージ・ハリソンのダークホース時代のボックス(国内盤はバラ売りのみだったが)も同じく国内盤、欧盤ともにCCCDで、私もアマゾンでCCCDではないUS盤を買ったのだが、その時はUS盤が国内盤よりも高い値段ではなかった。その時はUS盤ばかりが売れたらしい。
 なんにせよ、コピーができないことが嫌なのではない。コピーするならそんなプロテクトを外す方法はいくらでもある。「欠陥品」とも言える規格から外れたCDをターンテーブルに乗せるのが嫌なだけだ。
 しかし、これに対してストーンズサイドはどういうスタンスなのだろう。ミュージシャンの良心でもって反対して欲しい。案外ミックあたりは賛成なのかも。
 で、その新譜の内容である。期待してなかったが、いい。少なくとも「ヴードゥーラウンジ」や「ブリッジ・トゥ・バビロン」なんかよりはずっといい。 どの曲にも既視感がある。まったくもって「ストーンズらしさ」を追求したような音なのだ。それが奏効している。
 実はストーンズというのはアルバムごと、核はR&BやR&Rにありつつ、その時代その時代のヒップな音楽を取り入れてきた。60年代末期にはカントリーロックがヒップであったし、70年代初めにはレゲエが、70年代後期にはディスコで、80年代初期にはダブやヒップホップで、80年代末にはワールドミュージック、前作「ブリッジ・トゥ・バビロン」ではダストブラザーズをプロデューサーに迎えたりした。今回そういう実験的な部分はない。「彼ららしさ」を彼ら自身で再生産した作品である。その部分が世間でどう評価されているかは分からないが、アルバムは概ね好評のようだ。ストーンズならば、それは許される気がする。実際出来上がったものはいいものだし。
 それと、驚くべきことに、キースがヴォーカルの曲にもミックが参加している。恩讐の彼方のさらにその向こうって感じ。
 しかし、やはりビルワイマンの不在は、今だに痛い。在籍時からレコーディングに参加しないことは多かったが、それでもやはり居るだけで存在が大きい。ドリフにブーが必要なように。
 今度の来日は絶対に観に行くつもりだが、3分の1新曲でもいいんじゃないかと思える。いつもなら新曲は3・4曲程度だが。でも半分だったとしたら、それは多過ぎ。
 ちなみにタワレコのポップが「A bigger bang」ではなく「A begger bang」になっていた。「beggars banquet」とごっちゃになったのだろう。気持ちは分かる。