昨日のロマネックス

ボブサップという男は、優しいのだと思う。昨年大晦日に曙をKOで降した時、うつ伏せの、悪い倒れ方をしていた曙を、自分の勝利に浸るよりも先に気遣っていたし(それは対戦後に検討を称えあう姿勢というよりは、もっと素朴に相手を心配に思っての素振りに感じられた)、本質は戦闘的なタイプではないと思う。
その優しい部分が打たれ弱さとなって顕れているのだろう。優しいから「えげつなさ」がなく、数発もらっただけでかなり戦意喪失の状態になる。打たれている表情はまるで泣きそうなのだ。去年のグランプリでのボンヤスキーへの反則は、「野獣の本能」というよりは「追い詰められた小動物」の恐怖感から出た必死の抵抗に思えた。身体能力も体格も超一流で、その才能によってテクニック的にもおそらくかなりの進歩を見せているはずなのだが、「殴る蹴るの世界」では、最終的に雌雄を決するのは胆力なのだろう。冷酷でえげつないミルコや藤田との差はそこに由来する。
それは格闘家として、致命的な弱点なのだけれど、私はその優しさが好きであるし、お茶の間の人気者になりえたのも、その部分があってのことだろう。
だから応援する。昨日の試合による怪我が気になるけれど、復帰戦に期待する。
それと、ホイラーグレイシーに完勝した須藤元気にあっぱれだ。