マイワイフズ・カウンター・アタック

ストーンズの英での2枚目のシングルで、「アイ・ワナ・ビー・ユア・マン(邦題・彼氏になりたい)」はレノン−マッカートニー作で、ビートルズの2枚目「ウィズ・ザ・ビートルズ」にもリンゴのヴォーカルで収録されている。これは多分常識の範疇に入る知識だと思う。しかし1年半程前まで、私はそれを知らなかった。
高知市民図書館のAVコーナーで借りたストーンズのデッカ時代のシングルコレクションをMDにダビングしたのを持っていたのだが、そのアルバムはよく書店などで激安で売られている、権利はクリアしているのだろうが公式にリリースされたものではない、バッタものCDで、作曲者などの記載はなかった。1曲目が「カム・オン」で2曲目がその「アイ・ワナ・ビー・ユア・マン」だった。曲順はほぼ発表順通りだったので、その曲が2枚目のシングルであることは推定できた。最初期のシングルはカヴァー曲ばかりなので、それぞれの楽曲について、元ネタをレココレ別冊「STONED」で調べてみた。「STONED」は本当に重宝する。元ネタの紹介のみならずそのミュージシャンの経歴まで紹介していて、「守備範囲」を広げるのに大いに役立った。
それで、他の曲はすべて分かったのだが「アイ・ワナ・ビー・ユア・マン」だけは分からなかった。載ってない訳ではないのだが、先入観があったので、調べるにあたってはブルースやR&B、R&Rのカヴァーの紹介の項目だけを見ていたのだ。曲想はどうも純粋な黒っぽさがないような気はしていたのだが。
ビートルズストーンズに提供した曲がある」というのは聞いた事があったような気はするが、その件とこの件が結び付かなかった。それにその時は「ウィズ・ザ・ビートルズ」もまだ聴いてなかった。
長年の謎であった。
そして、妻はミック、キース、チャーリー、ロンの名前は知っていても、ビルとミックテイラーとブライアンは知らない(実際ベスト盤しか聴いたことがない)程度なのであるが、「ブリッジ・トゥ・バビロン」発表時のツアーでストーンズのライヴを観た事があり、私はそれをいつも自慢げに聞かされていた。私は今まで4回ストーンズ来日を見送ったのであった。ちょっとチケットが高いし、交通費もかかるし、今のストーンズにお金をつぎ込むくらいなら、ソウルフラワーやヒートウェイヴの方が観に行く甲斐があると判断したのだ。異論はあるかもしれないが「今のストーンズ」は「ナツメロバンド」だと思えてしまう。「ヴードゥ・ラウンジ」以降の新曲には魅力を感じないし。でも、他の観に行った人の話では「『お祭り』なのだから、それはそれで面白い」という事だ。正直に言うと本当は私も観たい。しかし金銭的に苦しい。
まあ、それで生ストーンズを観た事がある妻は、面白いライヴであった事を楽しげに話し、しかし「頭でっかち」なリスナーである私は、妻のあまりな「知識のなさ」に大変なショックを受け、妻も私の「止まらないウンチク」には辟易していた。
そんな会話の中で私は「でも、『アイ・ワナ・ビー・ユア・マン』の原曲が誰か分からんのよね」とボソっと言った。別に妻に答えを求めようという意思はない。ただ、なんとなく愚痴のようにこぼしただけだった。
ビートルズやんか」と即答が返って来た。
私は非常に落胆し、ストーンズについて語るのを辞めた。
妻はプライヴェーツのカヴァーで同曲を知っていたのであったが、彼女曰く「常識」らしい。
今では立ち直りつつあるが、「アイ・ワナ・ビー・ユア・マン」を聴くと蘇る苦い感情がある。そしてその度、妻は「この曲はビートルズが〜」と解説してくれる。