ローニング ストーンズ

高校3年生の晩冬、大学受験で広島に行った。一人旅など初めての経験で、受験どころではなく、大いに旅行を楽しんだ。
商店街でストーンズのベロマークのTシャツを見つけた。1000円と、破格の値段であった。その前の年、ストーンズは初来日、新譜も出たし旧譜もリイシューされていた。レンタルCDをダビングしてちょっとずつ揃えていた頃であった。
ストーンズはブルースフィーリングがあるからすごいんだよね」などと偉そうに話す少年であったが、「ブルースフィーリング」が何なのかは分かる訳はなかった。そんなもの、今でも分かるものかどうか。当時ハウリンウルフやマディウォーターズなど知るはずもなく、しかし「ギターマガジン」で特集された「ロバートジョンソンコンプリートレコーディングス」はレンタルで聴いていた。全音源を発掘した2枚組であった。キースリチャーズが薦めるから、だった。当然理解できず、楽しめなかった。何年もテープの棚で眠りつづけることになる。
余談であるが、数年前に「ロバートジョンソンコンプリートレコーディングス」は改めて買った。まあ、ほんとの意味でブルースを楽しめるようにはなっていたと思う。しかし買った直後、そのCDの廉価版が出た。大体そうなのだ。廉価版ならまだいい。バーズの「ロデオの恋人」を買った時もザ・バンドのファーストを買った時も、すぐにボーナストラック付きでリマスターされてリイシューされたのだ。そういうのは悲しい。
閑話休題。それで、ストーンズかぶれの少年は欲しかったベロマークTシャツを大喜びでレジに持って行った。
そして大学には落ちた。でも予備校にはよくベロマークTシャツを着て行った。
しかしある時気付いた。ロゴが「RALLING STANES」になっているのである。筆記体だったのでちょっと判り難かった。よく見るとベロの角度も微妙に違う。ニセモノだとようやく気付いた。
それからそのTシャツは、外出用ではなく就寝用になった。