出会いは「白」だった

初めて聴いたビートルズのアルバムは「ザ・ビートルズ」だった。確か高1の夏だった。AD.1988年。ロックに目覚めるのがちょっと遅く、ギターやバンドに興味を持ち始めたのがその頃で、U2の「魂の叫び」あたりが初めて聴いたロックのアルバムではなかったかと思う。まあ、その当時はバンドブームで、同時にヘビメタブームでもあったから、今では恥ずかしくて口にも出せないような音楽を聴いたりもしていた。たまに押入れからそういうCDを引っ張り出してヘッドフォンでこっそり聴いてみると、懐かしくてカラオケに行きたくなったりもする。ちなみにニューエストモデルやメスカリンドライヴやヒートウェイヴは多分名前も知らなかった。「エッグプラントに出てたころからからずーっとファンやねん」とかいう人は、尊敬の眼差しで見てしまう。
閑話休題。そのU2のアルバム「魂の叫び」の1曲目が「ヘルタースケルター」のカヴァーだった。「やっぱロック聴くならビートルズは押えとかなきゃいかんものなのか」と思い、CDレンタル屋に行き「ヘルタースケルター」の入ったアルバムを探した。他のバンドがカヴァーするくらいだから、ベストにも当然入るくらい有名曲だと思い込んでいた。その当時はまだ「赤」「青」はCD化されてなく、非公式なベストはあったかもしれないが、私は同曲の入った「ザ・ビートルズ」は2枚組だしタイトルがバンド名だしで、ベストだと思い込んだのだった。それに他のビートルズの曲名を、私はほとんど知らなかった。「抱きしめたい」も「ヘルプ」も「ヘイ・ジュード」も「レット・イット・ビー」も知らなかった。「イエスタディ」が入っていないことは「?」だったが、「ジュリア」が入っていたから「まあいいか」って感じだった。なぜか「ジュリア」という曲名だけは知っていたのだ。
それが「ホワイトアルバム」と通称される問題作(という程でもないか)であると知るのは家に帰って歌詞カードの解説を読んでからだった。テープにダビングする時、「レヴォリューション9」を飛ばすためにプログラム選曲を駆使した記憶がある。「なんかいろんな曲がありすぎてよう分からんぜよ」というのが感想だった。
ジョージマーティンは「ホワイト〜」があまり好きではないらしい。「もうちょっと曲を絞って1枚ものにすればよかった」とあちこちで言っているようだ。今ではベストに選ぶ人も多いが、90年代以前は一般的に評価が低かったらしい。
私も出会いのほろずっぱい思い出を抜きにしてもこのアルバムが一番好きだ。今では「レヴォリューション9」も(努力は要するが)聴ける。聴き終えた感触では「アビーロード」や「リヴォルバー」の方が統一感があり、食後感もよい。「白」は「いっぱいいっぱい」で「胃もたれ感」もある。(最後の「グッドナイト」はナタデココのような心地よいデザートでもあるが。)様々な曲が雑然と並んでいる統一感のなさにこそ魅力を感じる。どの曲も秀作で興味深く、他と同じような曲は1曲もない。どれも捨てられないと思う。1曲選ぶとすれば、「グラスオニオン」と「エヴリボディーズ・ゴット・サムシング・トゥ・ハイド・エクセプト・ミー・アンド・マイ・モンキー」と「ハピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」と「ヘルター・スケルター」と「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」等々、まあ、1曲だけなどとは選べない。