ウハウハの土佐

グルミットをよく撮った

 再来年の大河ドラマは「龍馬伝」に決まったそうだ。原作はなしで、脚本は福田靖。フジテレビのドラマをよく手がける人らしい。不安だ。しかし三谷幸喜の名前を聞いた時に何の期待もしなかったのだが「新選組!」はかなり好きな大河になったので、正味なところは分からない。
 岩崎弥太郎の視点で描くというところから、多分起業家的な部分の龍馬像が強く出されるのであろう。今風な解釈ではある。司馬遼太郎の「竜馬がゆく」の龍馬像からの脱却を図るのは妥当なことであると思う。(司馬遼太郎も実業家としての龍馬を描いてはいるが。)それはいいとして、問題は主演俳優である。まだ発表されていないが、ヒョロい兄ちゃんはゴメン蒙る。
 岩崎弥太郎という人は、地元であるにも関わらず、高知では人気がない。多分、経済的に成功しているからだろう。では、明治まで生きながらえていたとしたら、おそらく実業家として成功したであろう龍馬の後の世での人気は、これほどではなかっただろう。
 私も岩崎弥太郎は好きではない。それよりも「八大将軍吉宗」の近松門左衛門や「葵徳川三代」の徳川光圀のような立ち位置で、語り部役に中江兆民を持ってきて欲しい。兆民は藩の留学生として長崎時代の龍馬と面識がある。
 兆民の元を訪れた幸徳秋水を相手に「三酔人経綸問答」そのままに時勢について論じ合い、明治藩閥政府への批判から、その不在を嘆くように龍馬の思い出が語られる…という導入部で。(左翼的に理想化されたこれもまた古い龍馬像であるようにも思えるが。)NHK的に秋水はマズいだろうか。あるいは、兆民が田中光顕と龍馬の思い出を語り合う、とか。思想信条、政治的立場を異にする者同士であったが、龍馬という共通の「師」といってもいい存在を介して、通じ合うところはあったと…。絶対ないシチュエーションではあるが。
 田中光顕を語り部に置くのは我ながらいいアイディアだと思う。別枠のスペシャ大河ドラマとして「坂の上の雲」の放送もあり、日露戦争繋がりで昭憲皇后とのエピソードを挟んだりして。(となると、兆民はもう死んじゃってるが。)田中光顕は桂浜の龍馬の胴像の建立に尽力した人物でもある。
 一昨年の「功名が辻」に続いて、高知にはおいしい話である。高知コンベンションビューローはウハウハだろう。一豊などとは人気も桁違いだ。せっかくのキャラクター「かづとよくんとちよちゃん」は消えてしまうだろう。いや、もうすでにおそらくやなせたかしの元へ、龍馬がモデルのキャラクターのデザインのオファーは行っているはずだ。
 と、福田靖という脚本家について調べてみたら、2004年にフジテレビの「徳川綱吉 イヌと呼ばれた男」を書いていた。これは面白い解釈のドラマであった。このドラマと同じ路線で行くとすれば、史実とはかなり異なった作品になるだろう。