見たくて見ているのではない

 昨日TVで「龍馬の黒幕」というのがあった。夜勤明けだったので途中まで見て、寝た。ホントにひどい内容。龍馬を操っていたのはイギリス商人のグラバーで、龍馬はその意思に叛いたから殺されたという。
 龍馬への世間一般の認識というのは、司馬遼の「竜馬が行く」の影響もあり、龍馬への知識もないのにイメージ的なものが先行し、具体性に欠けつつ過大なものになっている。そのアンチテーゼとして龍馬の過小評価という動きもあるが、このTV番組はまったく的外れだ。根拠とする事実も誤認が多い。「時空警察」は「洒落」なので「なんでもありの共感」を呼ぶが、これはいただけない。その上「フリーメーソン陰謀史観」である。
 まあ、グラバーの影響力というのは大きかったことは事実で、そのところは再検討を要するが、「維新回天」が外国人の糸引きで行われたというのは、事実誤認だとしても、「国辱」ものの言い方ではないか。右翼よ、怒れ。私の歴史認識はいわゆる「自由主義史観」を自称する連中とはまったく異なるが、笑って済ませることはできない。加治将一というライターの本がこの番組の元になっている。
 そして、大河ドラマ功名が辻」である。
 おそらく脚本家が歴史を分かってないのではないか。足利義昭を素人役者(三谷幸喜)にやらせるのも無茶苦茶だが、政治的な部分がまったく描かれていない。掘り下げようという気もない。ただの事実の羅列だけになっている。原作もソフトな小説ではあったが、薄くも浅くもなかった。司馬遼が見たら頭を抱えるだろう。政治や軍事に関わりのない日常的な場面も、バカ夫婦としか見えない。五藤吉兵衛と祖父江新右衛門のやり取りだけはいいんだが。
 今からでも遅くないので、スタッフ入れ替えを。
 もはや文句を言うために見ているようなものだ。見なければいいのだが、一豊に興味はあるし、過去の大河ドラマを再放送しないNHKにあって、戦国ドラマは貴重であるので、見ざるを得ない。
 高知県の観光客さえ増えれば、それでいい。