謎の権兵衛さん

冬眠したいわ

 すげーおもしろいサイトを見つけた。
「現代奇談」
http://osi.cool.ne.jp/
 「都市伝説」を収集し、都市民俗学の方法論で考察したサイトである。
 サイト内には怪談だけでなく、「子供民俗収集所」として替え歌や遊びの中での使われる言葉の地域による違いなど分析したコーナーもあり、「どちらにしようかな」の唄が取り上げられている。「自分の意思でチョイスできないよ〜」という場面で「どれにしようかな♪」と唄いながら順番に対象物を指差して行き、唄の最後に指が止まったものに決めるというアレである。
 私のまわりで子供の頃唄われていたのは以下の通りである。
 
 どれにしようかな
 裏の権兵衛さんに聞いたらわかるぞね

  
 そのサイトの管理人さんが収集したところによると「裏の権兵衛さん」は近畿でしか見られなかったようであるが、実際高知の城下でも言われていたのは確かである。少なくとも、「坂本龍馬のうまれたところ」にある小学校では。ちなみに「ぞね」というのは終助詞で、荒くない調子の断定くらいの感じだろうか。「ぞ」+「ね」が語源だと思う。近畿では「裏の権兵衛さんに聞いたらよくわかる」という形らしい。加古川出身の妻に聴いてみたところ、やはり「裏の権兵衛さんに聞いたらよくわかる」だった。(ただし、加古川が近畿なのかどうかは議論の余地があるが)
 これは興味深い。この唄はいつごろどこで成立して、どのように流布して行ったのだろう。
 「権兵衛さん」以外には「神様」や「天神様」「裏の神様」などの形が見られる。「自らでは下せない」決定に力を借りようとする対象が神様なのは分かるが、神様と並ぶ権兵衛さんとはどれほどすごい存在なのだろう。「裏の」とは「ご近所さん」という意味だろうか。何者なのだろう。わからんぞね。

 ここまで書いてアップしようとして思いついたが、「権現さま」が変化したものだろうか。それならそれでその変形(多分誤謬による)のままで近畿から土佐まで伝播したというもの面白い。あるいは「名無しの権兵衛」という慣用表現とも無関係ではなかろう。