日中関係の悪化が続いている。中国ほどでないにしろ、韓国との関係も悪化している。
どちらがより悪質か、という議論は事態の解決に、なんの効果ももたらさない。
中国政府が「愛国教育」の一環としての「反日教育」を行っていることはいうまでもない。
政府への鬱憤を逸らすため、反日デモなどもある種ガス抜き的に利用しているとも思える。
先日の朝のTV番組で佐高信が言った言葉が印象的だった。誰の引用か忘れたが、ある日本の歴史学者の言葉で、「歴史を学ぶことは、国を愛し、同時に国を憎むこと」といった内容だったと思う。
中国の歴史教育は、韓国でも同傾向はあるだろうが、誇大に日本の侵略行為を挙げ、あるいは歪曲し、反日感情を植えつけているように思う。
しかし、こんにちの日本も、確実に右傾化している。悪質な相乗効果というか、悪循環というのか。
来春から使われるすべての歴史教科書から「従軍慰安婦」の記述が消えたという。従軍慰安婦に言及すると、検定は通ったとしても、各教委や学校で採用されにくくなるかららしい。扶桑社の例の教科書は極端だとしても、全体的に右傾化は見て取れるようだ。
歴史を冷静で公正な目で見れば、「国を愛する」ことも「国を憎む」ことも自然と持つ感情だと思う。暗部を知ったからといって、自国を全否定するわけではないだろうし、それこそ歴史を教訓として活かすという意味で知るべきことだ。
ことさらに教育政策の上で「愛国心」を強調するのは危険だと思う。
国家が求める愛国心は、郷土愛のような自然な自己愛ではなく、体制の思惑に沿った社会を作ることである。
中国で今起こっていることは、悪質なナショナリズムという意味で、かつての日本にあったもの、今も蠢動し、再び台頭しようとするものと、同質のものである。