ほんとうは道間違えました

 地下鉄で大手町駅まで戻り、預けた荷物を回収した。最初は皇居外周を歩いて周りながら首相公邸、最高裁、国会議事堂から靖国を見るつもりだったが、しんどくて短い距離でも地下鉄に乗ってしまった。それから地下鉄を乗り換えて浅草へ。東京は同じ名前の駅でも別路線への乗り換えでかなり歩かなければならない。土佐電鉄の「いの―ごめん線」から「桟橋線」の乗り換えの「はりまや橋」の100倍程度も歩かなければならない。こういう部分で想定外に体力を消耗する。
 浅草駅に着いた時は6時になっていたがまだ明るかった。前回の11月と違い、日が長いのがいい。
 浅草駅も宿泊先も隅田川の右岸であるが、吾妻橋から言問橋まで左岸を渡って歩いた。きれいな川ではないが、歴史ある川だから見ておきたかった。そしたら言問橋間近で勝海舟銅像を発見。ノー・マークだっただけにラッキーであった。
 ほんとうは隅田川を渡りたかったというよりも道を間違えたのだが。
 ホテルの部屋は狭く、昔風なビジネスホテルといった感じ。でも安くて浅草寺にも近く、係員の感じもいいのでオッケー。
 しばらく休んでから、浅草寺まで散歩。ここでも添田さつきの『東京節』を口ずさみながら歩く。
 
 「東京で繁華な浅草は 雷門、仲見世浅草寺
  鳩ポッポに豆売るお婆さん 活動 十二階 花やしき
  寿司 おこし 牛 てんぷら
  なんだとこんちくしょうで お巡りさん スリに乞食にカッパライ」

 
 十二階は震災で倒壊したし、浅草は唄の当時のような繁華な街ではなくなっている。観光地としては今も充分華やかではあるが、歓楽街はではない。でも下町の風情には満ちている。こういう雰囲気の街は、落ち着く。花やしきは現代でも健在で、営業時間は終わっていたが、ジェットコースターは動いていた。
 「ロック座」という店を見つけた。何だかよく分からないが、ロックというからにはロックンロールな店なのだろう。でも入場料は6千円と、ちょっとした外タレ並みで、出せる額ではなかった。とても入りたかった。ポスターを見ると来週から鈴木杏里が出るとあった。鈴木杏里もロックスター・デビュなのか…。今出ているのなら迷わず入っただろう。
 平日の夜の浅草寺は人気も少なく、仲見世などもほとんど閉めていたが、提灯明りは趣きがあった。
 浅草らしく、つけ麺を食す。どう浅草らしいのかは分からない。妻から「焼肉を食べに行く」とメールが来た。ふーん。
 ホテルに帰ってすぐに意識がなくなった。早起きしたし、歩きづめで疲れた。