非公式見学

夜の浅草寺

 九段下の駅を降りて蕎麦を食べ、そして靖国神社へ。大鳥居をくぐって東京三大銅像最後のひとつ、火吹きダルマ大村益次郎像を見た。
 「普通の日」の靖国は「特殊な場」であるのが嘘のように日常的な神社に見えた。鳥居から正殿までは。正殿から右に折れて「遊就館」へ向かう。
 「靖国」は「特殊」なのだろうか。内外の状況を見るに「特殊」であるという他ない。神道国家神道により変質させられた。靖国はその最たるものであると思う。
 靖国に足を踏み入れたら「国家神道」「政教分離」「歴史認識」そういったものについて考えざるを得ない。
 「パール判事顕彰碑」を過ぎて遊就館へ入館。パール判事は、「極東軍事裁判」で日本の無罪を主張した。去年だったか、NHKスペシャルでパール判事についてのドキュメンタリーを見た。小林よしのりがその番組について書いていたのを読んだが、曲解だと思った。小林よしのりの漫画は、遊就館ミュージアムショップにも高々と積み上げられていた。
 日清・日露から第一次大戦まで、栄光についての語り口はえらくハイテンションだった。所謂「大東亜戦争」については、まるで「大本営発表」の再録であった。
 入館客の中には、外国人の姿も多数見られた。台湾か本土か分からないが中国系の人たちと、アングロサクソンも多くいた。彼らはそれぞれ、どのように感じたのだろう。
 展示室のひとつに、合祀されている人たちの10cm四方ほどの遺影を掲げた部屋があった。70代くらいの女性3人のグループに、その中の遺影の1枚といっしょに写真を撮って欲しいと頼まれた。シャッターを押した後で、その3人ともが遺影の方の妹さんだと教えてもらった。靖国を考える時に、忘れてはいけないことがここにある。学生時代から20代までの私なら、この場所は全否定すべき対象であったであろう。今の私はそこまでではない。本質的に変わったというのではない。視野は広く持とうと思うし、冷静であろうと思う。
 本当は他にも思うところはある。だけど怖いので書かない。