東京に行ってきた

トーキョーステーション

 先日初めて東京に行った。修学旅行で行った長野より東は、未踏の地であったのである。
 とは言っても、仕事で行ったのであって、現地で物見遊山などする暇はまったく許されなかった。出張とは言っても、ある研修に誰か人員を出さねばならぬから取り敢えずこいつで、といった感じの言わば人身御供のようなもので、特にビジネスをしに行くでもなかった。
 羽田に着陸態勢の飛行機の窓からフジテレビが見えたときには、思わず声を漏らしてしまった。富士山が見えた時は、予想していたこともあり、感嘆の声は飲み込めたのだが、フジテレビ社屋は突然過ぎた。旋回する飛行機の窓には、すぐに東京タワーも飛び込んで来た。クレド岡山よりも高いビルが、無数にあった。
 ひとまず少ない時間で上野の国立博物館に行ってみたら、月曜のため休みであった。「大徳川展」の開催期間であったのに。
 上野公園を歩いて西郷どん銅像はだけ見た。たむろするホームレスや明るいうちからベンチで破廉恥に乳繰り合う男女が都会の雰囲気を演出していた。
 秋葉原の駅に電車が着くと、タクっぽい兄ちゃんたちが一斉に乗り降りした。私も降りて、オタク街を歩いた。メイド服の娘がビラを配っている姿は見かけたが、入店するには、シャイ過ぎた。「男の癖に軟弱者」と同僚からメールが来た。
 フィギュア屋を見て回った。そういう店は岡山にも高知にもある。しかし規模も数も熱気も違う。結局同僚から頼まれていた怪獣のフィギュアは見つけられなかった。多分、私が見たのは表層の一部で、もっとディープな世界があるのだろう。
 東京駅で降りた時にはもう暗く、東国の日の暮れるのの早さを感じながら皇居まで歩いた。暗がりの中にうっすらと浮かぶ江戸城の名残の櫓は光量不足で写真に収めることはできなかった。皇居外周をランニングしている人は多かった。ふたつの疑問を感じた。こんな空気の悪い中走って苦しくないのか。それと、この人たちはこの近隣に住んでいる訳ではないだろうが、電車で来て電車で帰るのだろうか、そのまま運動着で。
 後で調べてみると、駅のトイレで着替えてコインロッカーに着替えを預けたり、近隣に銭湯のような施設もあるようだ。
 ただし、私個人としては、日本の「都」は今でも京都であると考えている。だって、遷都の詔は出ていない。天子様は長いお出かけの最中なのだ。
 結局、そんなところで、東京を判るには時間がなさ過ぎた。東京に残る「江戸」も「帝都」も感じることは出来なかった。何処でも頭痛がするほどに人が多い。通勤時間帯の品川駅で今まで見たことがない数の人間の動く姿を見た。靴音が恐ろしかった。目眩のするくらい「都会」であった。でも考えていたほど「魔都」ではなかった。人間の住むところに、違いはないと思った。再訪したい。